囲碁がぶっ壊れる本の紹介

タイトルからして危ない雰囲気が漂っていますが、そんなに危ないことは書きません。

のんびりとおくつろぎください。

 

私は60年前に 新聞の囲碁欄で数字と文字を覚えたというくらいに昭和、平成の歴史の生き証人にもなれそうな高齢者予備軍ですから囲碁の記憶は1960年位から始まっています。

1960年といえば私は3歳でした。

囲碁を覚えたことと、いきなり「囲碁なんて嫌いだ」と思って対局拒否したことは別途ブログにアップしますが、囲碁は自分で打たなくても楽します。

文章を読めるようになっても、自分で文章を書かずに人様の文章を読んで楽しむことができるのと同じです。

相撲ファンで相撲をやってる人ってごく少数でしょう。

 

棋譜が紙媒体しかなかった時代は、囲碁月刊誌の付録の名局細解が宝物でした。
若い人はもう見向きもしないかもしれないけど、1ページに数手が示されていて、数十ページを費やして一局を解説する贅沢な作りの小冊子です。

棋道の付録だったかな。


今はネットで検索して、誰かが入力してくれた棋譜を(感謝しつつ)漫然と眺めているのが楽でいいけれど、たまに総譜で全体を俯瞰して、序盤から中盤を脳内で再生することもあります。

子供の頃は10分で50~80手を再生できました。

62歳になって、脳力ダウンしているうえに最近はネット碁しかしていないから、できるかな? ということでネット碁高段者の終局図(総譜)を鑑賞してみましたが、全く追えませんでした。

総譜で見ると、昭和の時代の常識と現代のトッププロがインストールしている常識は相当に異なっているようです。

二手目から着手を探すこともありました。

変則的な布石ではなく隅を重視する普通の碁でも着手がずいぶん変わってきたことに気がつきます。

 

現代碁の鑑賞もしてみようかなと思っています。

今のところ、ややこしさの排除という方向かなと思っています。

昭和なら味消しと言われそうな手を決めてしまうのは対局時間が短いからかもしれません。昔の碁では様子見を打つかどうかで一時間以上時間をつかうなんて珍しくなかったです。

サンサン入りが早い(簡明で楽)

小目:小ケイマかかりと秀作のコスミが多い、挟むことは少ない

小目高掛かりに二間高ハサミ(妖刀)がほとんどない。

目外しからの大斜百変がほとんどない。

大ナダレ定石は未完成なのに打たない。

 

でも、棋道に全身全霊を捧げ、ついに新手を発見し囲碁の歴史に一ページを加えることを自分の存在意義としたという昭和の棋士には「先生の囲碁観をお教えください」ということになり、人間として、棋士として、どのように自己を律し、時には息抜きをし、という実に含蓄のあるエピソードがきけました。

さて、現代碁で新手、すなわち「もっといい着手があるような気がする、それを見つけたい」というクリエーターの視点があるでしょうか?

意外な手をAIが打ったら検討し、AIの評価値の高いものを採用するだけでは囲碁の進歩がAI任せになってしまいそうです。

 

今、このブログを書いていて思ったのは・・・・

 

山下敬吾九段は、碁聖戦を5の5、天元戦を初手天元で制覇しました。当時のインタビューで、ゴロがいいし中央の戦いを重視しているから、と答えていました。

でも、数年後に「プロの感覚で言うとほんの少し甘いと思うようになったのでもう打たないと思う」と言っています。

こういう話が好きです。

AIにきいたら初手天元は少し評価が低いからやめました、という話ではありません。トッププロとしての矜持を維持しつつ、実戦で試しながら着手の良否を検討していたのです。

AIは勝ちやすい方法を計算して、予想して勝ちに来ます。

根本がコンピュータですから

だから初手天元の評価値を見て、初手天元を誰も打たないのでしょう。

 

初手天元はもしかしたら最善の一手ではないのか? と思ってチャレンジしてくれないかな。そういうプロが出たらネットで少額支援者をたくさん集めて生活基盤を作りながら囲碁を打ち続けられるような気がします。

 

自分の打つ碁が、戦闘を好むものに変化したことに気がついたので、プロの棋譜の見え方も変わったかなということで検証してみたら確かになにかが違います。
以前見た棋譜が新鮮に見えます。

 

ここで一人の棋士をとりあげたいと思います。

宮沢吾郎九段。
さかなくんのお父上です。

序盤でどこに打つのか予想しにくい棋士です。
対局相手との共鳴で面白い展開になるように、それを楽しんでいるように思えます。
そういう対局姿勢ではタイトルを制することはむつかしいというか、残念ながら無冠です。
でもその路線で、九段なのですから「とてつもないこと」だと思います。

武宮九段より学年でひとつ上。
石田、加藤、武宮の三羽烏と同世代です。
石田コンピュータ、殺し屋加藤、宇宙流武宮というニックネームがつきましたが、無冠の帝王宮沢で終わりました。


もし、宮沢さんが一つでもタイトルを取ったなら「天才宮沢」と言われたのではないかと思います。
私の見立てでは、宮沢九段は「勝ちたい」という俗なことは考えていないようにおもいます。
面白い展開に気がつくと、その結果を見たくなるいたずらっ子みたいな感じです。

「俺の相手は碁盤だ」と言って勝ちにこだわらず最善手を探し求めた梶原武雄先生と通じるものがあります。

宮沢さんも梶原先生の薫陶を受けています。
でも、梶原先生は碁盤に展開する石の姿を追求したのに対して、宮沢さんは「この人はどういう返しをしてくれるかな?」と問いかける感じです。
それまでに常識とされていた「棋理」をひっくり返すようなことはないのですが独特の雰囲気があります。


今から40年前に木谷道場から戦後生まれののレジェンドたちが、大量に誕生した背景には、常識に拘泥せずに面白さを追求した宮沢さんの存在があったと思います。

 

石田流に半目勝ちに行く碁

加藤流に相手の巨石をぶっ殺す碁

武宮流に前代未聞の大模様の碁

 

成果を出した皆さんも、それまでの旧定石や常識にとらわれずに自由な表現をしたのだと思います。

この戦後生まれの天才たちのなかでも、私よりひとつ年上の趙治勲さんのことは語りたいです。でも、今日は囲碁がぶっ壊れる本の紹介だから割愛します。

 

宮沢さんの本を以前買ったなぁ、と思って探してみたらありました。
「常識破壊」
2005年に出版されています。
この本は、強くなりたい人にはお勧めしません。
いや、むしろ読まないほうがいいかもしれません。
とても強い人が、壁を破りたくて敢えて読むというのはアリだと思います。
説明は明快で、級位者でもプロの碁を見るのが好きな人なら楽に理解できると思います。

囲碁の理解力は深まると思います。
でも手っ取り早く段位を上げたのなら読むのは遠回りになると思います。

 

私の評価 

 面白さ ☆4

 棋力強化 ☆2

 総合評価 ☆5!

 

 

私がよく見ているYouTubeチャンネルを書き出してみます。

独居の高齢者(見習い)としては、毎日楽しい記憶を積み重ねて「ニコニコしながら生きていこう」と心がけています。

でも、かならずしも思うようにならないことが多いです。
そんな時、自分のお気に入りのYouTubeチャンネルと甘い食べ物で心のささくれをいやすことにしています。

以下がそのチャンネルです。

ありがとうという気持ちを込めてコメントをすると時々返信があって、そのたびに「あ、ネットでつながってるんだ、嬉しいな」と思います。
心からお礼を申し上げたいチャンネルです。

 

【ニュース系】

新聞、テレビに極端なバイアスがかかっていることに気がついたのは25年位前のことです。
でも、世間知らずではいろいろとマズイのでここに挙げたチャンネルは欠かさず見るようにしています。
気になったニュースはネットで自分でも調べてみます。
でも、芸能ネタとスポーツネタは欠落しています。

神河が征く / わかるニュース解説 KKNewsNetwork
https://www.youtube.com/channel/UCYpzCtAPkyHBvY1xwA3Et1w

虎ノ門ニュース
https://www.youtube.com/channel/UCuSPai4fj2nvwcCeyfq2sIA

ほのかな世界
https://www.youtube.com/channel/UCrsAxeChFlR8nYLE2bd_GHg

こころの世界の気になるニュース
https://www.youtube.com/channel/UCPKkNidlRHFTPpU4ZqcuhFw

ゆきのん日和【NEWS】
https://www.youtube.com/channel/UCTkhxITYatmAMN2nl3FayEg

らぶりー日本
https://www.youtube.com/channel/UCZWpSTs-k6vFCNE-dXRIrzA

 

【旅・グルメ】

食べてみたい、行ってみたいと思わせてくれるチャンネルです。
外人さんに日本酒と日本食をすすめる「食冒険記」は英語の聞き取り能力アップの目的で見始めました。以前は英語が苦手でしたが、いつの間にか「英語はあまり得意ではない」くらいになっていました。
「高尾てんぐ」さんは実に美味しそうに酒を飲みよく食べます。
一人酒を楽しむときに、男友達に見立てた高尾てんぐさんの動画を見ながらということがあります。女友達に見立てた「はなび」さんのこともあります。
はいじぃさんが紹介するコンビニ食とファーストフードは間違いないので、運よく見つけたら必ず買ってみます。

キユウ / Kiyu
https://www.youtube.com/channel/UC7S-KLvk7ujMk8akdLqJXsw

日本食冒険記Tokyo Food Adventures
https://www.youtube.com/channel/UCXz4C2UgKkskK8ZcEbgRDVA

はいじぃ迷作劇場
https://www.youtube.com/channel/UC-km1012mEUQQLGxggmrazw

高尾てんぐ
https://www.youtube.com/channel/UCXLxIIgVJGgExxRMTr4Cwjg

はなび「Hanabi Rainbow」
https://www.youtube.com/channel/UCjJXTPC8E3QiJVhsoOKJXsw

 


囲碁とオンラインゲーム】

アナザーエデンの上級者biriQさんはトークに温かさがあります。ライブ配信の観客になって発言すると、若い人たちと一緒にゲームをやっているような気持になります。
でんでん虫さんは声優さんかな、と思うほど声が聞きやすくて癒されます。自分でプレーしてクリアしたクエストもでんでん虫さんの読み上げで見ると楽しいです。
横浜囲碁サロンさんは初二段クラスの私にピッタリのチャンネルです。柳沢プロの講座も私のレベルにピッタリです。
ridoさんはかなりハイレベルなので私としては背伸びしてみている感じでありますが、トッププロの棋譜を観るのが好きなのでほとんど観ています。


biriQ
https://www.youtube.com/channel/UCjb49k39mJm9LhUVAl0-TwQ

でんでん虫
https://www.youtube.com/channel/UCa8g5A0CTSx5B8jaHmYT4ZA

横浜囲碁サロン
https://www.youtube.com/channel/UCaLNynXs73zTyMiL-hvzVwg

プロ棋士 柳澤理志の囲碁教室
https://www.youtube.com/channel/UC9qDo2BvI1zzgcIptrbbqMA

rido channel
https://www.youtube.com/channel/UCKKchhYzdJTHxHcCeiUnLEA

 

【日常生活】

日々がんばって生活している若い人の動画を見ると、私も何か作って食べよう、とか掃除しなきゃ、キッチンを綺麗にしなきゃ、という気になります。
彼女たちの動画から日々の生活を維持するモチベーションをいただいています。

の毎日おにょこ
https://www.youtube.com/channel/UCRb4C9ZtzV2W6-yMH6Yg2Lw

岡奈 なな子の日常short movie
https://www.youtube.com/channel/UCt-1ijH9G4J6Uy6KzDMHwCw

hana channel
https://www.youtube.com/channel/UC3F95rkSEKK2t376zgy9JhA

naru 。
https://www.youtube.com/channel/UCRtRA4VxjPtZHB_xsDZc1hw

yoriko's life
https://www.youtube.com/channel/UCUgMPuASK_icRhkW7UafSmQ

 

【ピアノ】

以前からピアノの音が好きで演奏を聴いていました。
ストリートピアノという私が知らなかった楽しみ方を教えてくれたチャンネルです。
以前は観るだけのヒトだったのですが、最近自分でもストリートピアノを弾いてみたいという気分になっています。でも人前で素面で独りで、っていうのはハードルが高いですね。
昨年末に西武線江古田駅にストリートピアノが設置されていて、思い切って弾いてみる気になったのですが、午後3時以降は弾いてはダメということでした。もう一度そういう気になれるといいな。

ハラミちゃん〈harami_piano〉
https://www.youtube.com/channel/UCr4fZBNv69P-09f98l7CshA

うちのピアノロイドが殺人鬼である可能性は微粒子レベルで存在する
https://www.youtube.com/channel/UC-re3cAbDJ-3u1Lzt6AK8Jw

よみぃ
https://www.youtube.com/user/WoooRen1006

 

 

 

無縁社会という言葉が取り上げられてからちょうど十年

無縁社会というショッキングな言葉はちょうど10年前の2010年1月 NHKスペシャルで取り上げられました。

このテーマを週刊ダイヤモンドなどの経済誌は社会のパラダイムシフトと関連付けてビジネス視点から特集を組んだこともありました。

ものすごく雑に要約すると、

地縁・血縁といった人間関係が高度経済成長により破壊され、職場縁だけとなり退職後は無縁になってしまうということです。

孤独な老人の実態や、貧困に苦しむ母子家庭などが陰鬱な映像と音響を駆使して流されました。

ものすごく救いようのない社会をイメージさせられました。

 

そのころ私は高齢者福祉関係の仕事をしていて、出たばかりのスマホタブレット(どちらもアップル)を利用した高齢者向けサービスの構築という時流に乗りそうな仕事を請け負って割と忙しかったことを記憶しています。

ネットと高齢社会というテーマでいろいろな仕事をさせていただきました。

 

もうあれから10年がたったんですね。

自分が高齢者の端くれになってみて思うことは、人類の夢の一つに「不老長寿」というのがあり、その理想に一番近いのが日本だということです。

不老長寿の理想を目指しているんだったら高齢者が増えるのは当たり前のことであって、高齢者を支える社会全体がどのように構造変革(世代間の役割分担)を進めていくかという問題解決型のアプローチをした企業は成長しています。

 

逆に、これは社会全体が悪い方向に進んでいるんだということで批判を繰り返してきた企業は今、危機に面しています。

新聞各社、地上波のテレビ、NHKなどです。

 

そして、ネットを活用できるかどうかで生活の楽しさが全然違ってくるということも言えます。

私は都会の隅っこのワンルームで、仕事もほとんどネットのやりとりでやっています。Twitterネット碁、ネット麻雀、オンラインゲーム(いわゆるネトゲ)、Amazon、プライムビデオ、YouTubeでローコストだけど楽しみはたくさんあります。

 

無縁社会を有縁社会(うえんしゃかい)に作り替えるのはインターネットだと10年前に思いましたが今となってはネット接続できない生活は考えられなくなりました。

 

囲碁 プレーヤーと鑑賞者について あるいは趙治勲への執着

https://gokifu.net/t2.php?s=5411576988404301


囲碁 プレーヤーと鑑賞者について あるいは趙治勲への執着

黒番が趙治勲、白番が苑田勇一、二年ほど前の棋譜です。

黒27が趙治勲流です(たぶん)。
少なくとも私には27と伸びる発想はありません。
この棋譜を見ても私には打てません。
わざわざ相手に、大切にすべき厚みを作らせてそれをガシガシと削っていくわけですか。
この碁は、苑田流と趙治勲流の面白いところが全開です。このまま永遠に打ち続けてほしいんだけど、碁盤は19×19だからいつか終わりが来ます。
そしてどちらかが半目負けることになります。
でも、どっちが勝つかなんでどうでもいい。

私が最近師事している広島県在住の高段者DKさんから、趙治勲さんの碁についてコメントをいただきました。

【師匠のことば(引用)】

趙治勲さんとAIの考え方は近いと思っています。
それがわかりやすい趙治勲さんの言葉は、「生きている石が厚い」で、AIもその考えがメインだと推測しています。

(私からお礼の言葉)お忙しい中、コメントありがとうございます。

師匠は多くの囲碁Twitter諸賢に「参考にしてください」と言って参考図を送ってくれます。
私だけではなくTwitter棋譜をアップしている多くの方にこのようにコメントをしています。
本来なら幾許かの授業料を支払って教えていただくようなことを無償でしかもこまめにやっていただいています。
余りに申し訳なくて
(実は私は法律や事務作業効率化(特にITを利用した事務システム構築)の仕事をしていて「知恵はいくらでも出しますけど仕事だからお金はください」という賤しい仕事をしています)
知識、経験、アドバイスは無料だと困るんです。
お礼になにかお歳暮を送らせてくださいと申し出たのですが、
「そのうち東京に行くことがあったら一杯飲ませてください」
ということになりました。

師匠の上京を心待ちにしております。


私の戯言に戻ります。

師匠DKさんのことば(Twitterのコメント)を拝読して、苑田勇一九段の著書にある言葉を思い出しました。

苑田勇一九段が15年くらい前に出した本に
「生きている石の近くは小さい、生きていない石の近くは大きい」
ということが書いてあって、基本原理は趙さんと一緒なのにアウトプット(棋譜)は全然違うな、と思ったことを思い出しました。

趙さんは私より一歳上なので、就学前の幼児期から応援していたから彼だけは別格で「さん」づけなのをお許しください。
ほかのプロ棋士にさん付けをすることはありません。

苑田先生と我が趙兄貴の棋譜は見たことがなかったので探してみましたらありました。

苑田先生は西の宇宙流(東、あるいは世界の、は武宮九段ですね)と言われますが、大模様を指向しているのではなく彼が見える大所を順番に打っていくと大模様になることが多いと理解しています。

武宮九段の碁も、別に大模様を目指しているわけではないというような言葉を十代のころに読んだことがあります。
これも40年以上前のことですが私は覚えています。

苑田先生の本を買って苑田流を私の老朽化した頭脳に適当に(別の言い方ではいい加減に)インストールした結果、全く「碁にならない」ようになりました。 
そのぶっ壊れ方というのはものすごくて、私の最盛期には東洋囲碁で5段だったのに負け続けて2級にまで落ちたことで証明できます。

こういうコペルニクス的な崩壊を最近もやらかしました。

広島の師匠と月一回の棋譜添削をお願いしているvtuber小澄らんかさんからほぼ同時に「基本死活と手筋の勉強」をしたほうがいいとアドバイスされて、恥ずかしながら60年の囲碁ファン歴で初めて、初心者が勝つための勉強を始めたんです。

これって、どういうことかというとプロ野球ファンを長年やってるけど野球をやったことがない人が草野球に参加してみたらショートゴロを捕るのも難しいし捕ったとしてもファーストに投げると大暴投みたいなことが起きたんです。

連敗しました。
二級まで落ちました。
野狐で3段に上がって、師匠と小澄らんかさんにお礼のメッセージを送った直後でした。

囲碁を続けようかどうかすごく迷いました。
プレーヤーとして三段か四段を目指す代わりに、棋譜鑑賞者としての鑑賞眼をなくしてもいいのか?
囲碁を覚えてから60年くらいで、自分で普通に打つとちょうど初段か2段くらいです。
東洋で5段になったのは、息子がものすごい勢いで強くなってきたので、いずれは父親を必ず超えてくる息子のために少しでも高い壁になりたいと思ったからです。
持ち時間30分以上(ネット碁ではほとんど無理ですね)で一生懸命に考えて5段が到達記録の私が、コンスタントに自分の楽しみのために3段で打てるようになりたいのかどうか。
自問自答しました。

ネット碁で見ず知らずの方(特に特亜方面の方)と打つと終局時のトラブルに出会うことがあります。
そういうことが続いたこともあり囲碁を打つことが嫌になりました。
で、ネット碁を打たなくなったらヒマになりますよね。
そういう時にはネットで検索して気になる棋士や好きな棋士棋譜をPCで再生してみていました。
やっぱり、囲碁はトッププレーヤーの作品(対局)を観戦者として見ているに限ると思いました。

でも、死活や手筋を少し勉強しただけで(それまでゼロだったから新鮮でした)、トッププレーヤーたちの棋譜がさらに面白く見れるようになったんです。
本に出てくるような手筋や死活問題はトッププレーヤーの棋譜には出てきません。
でも、そういうものはお互いに既定の事実として見えているという前提で打ち進められています。
そういう既定の事実が100あるとしたら、そのうちの大半は基本死活か基本手筋で説明済みのことです。
基本を超えた手を面白がって鑑賞するのが囲碁ファンである私のポジションだと思いました。
ちょっと基本死活と手筋を勉強するだけで、
「わー、すごいなl
と面白がっていたポイントが10あるとしたらそのうちの9は基本手筋の回避だったりすることがわかりました。
碁打ちとしては昔と変わらず初二段ですが、囲碁鑑賞者としては一ランクレベル上げできたような気がしています。

(蛇足みたいな追記 そして結論)
遅まきながらやっぱり囲碁も打ちたいと思いなおして今、野狐初段、東洋二段に戻りました。
師匠と小澄らんかさんに私が見落とした手筋や石の方向性をアドバイスいただきながらもっとトッププロの見えている世界を楽しみたいと思います。
その結果として
「コンスタントに3段で打てるようになればよし、なれなくてもよし」
というスタンスでこれから20年か30年(私の血筋はボケずに長命なのです)囲碁を楽しんでいきたいと思います。

一線と二線を這うのは相手の根拠を奪って攻めるため

https://gokifu.net/t2.php?s=3671576977919517

 

さて、この黒番は有名なプロ棋士ですが誰でしょうか?

答えは趙治勲さん。

2017年に結城聡九段と打った棋譜です。

 

趙さんの碁は、子供の碁は半世紀以上変わらずに一線渡りや二線をはうことをいとわずというか、相手の地を削減することを攻めに利用することが特徴だと思います。こんな棋風の人はこれまでにいなかったと思います。

彼は相手の根拠を奪って攻め上げます。
決して確定地が欲しくて二線や一線を打つのではないのです。

マチュアが真似しようとしても真似できない強烈な個性です。
その点でいうとほんの少しだけ同世代というより先輩格の武宮九段の碁は、実にかっこよくお洒落でアマ初級者が真似をしてもそれなりに碁になるという意味で分かりやすい棋風だと思います。
武宮九段の棋譜を見ると、難しいことは一切考えずに盤上の大きく見えるところを順番にうつだけのシンプルなゲームに見えます。
もちろん、その裏には複雑な読みがあることは言うまでもありません。
なにせ、このシチョウ詰碁を十数秒で解いた程の方ですから。

中山典之先生が創作した作品をこちらにご紹介します。

私は棋譜入力するだけでも10分以上かかりましたし、何度か間違えました。
https://www.youtube.com/watch?v=aOak8j51Q6Q

 

趙さんの棋譜を見ていると実に美しい手筋がときどき登場します。
何をしているんだろうと なかばぼんやりと眺めているうちにだんだんわかってくるのが楽しいです。

上辺の打ち込みから投了図の上辺絞りながら一線渡りで強烈に白を攻めています。
139の一手は白に中央の地を作らせながら同時に捨て石作戦でその地を崩壊させることを狙っています。

もっとさかのぼれば40のツケに対して下を這うという選択をするでしょうか。

AIのご託宣がもてはやされる現代の囲碁では評価値が下がりそうな手を連発しているように思います(試してみたことはありませんが)。

139に戻ります。

この時点で肩つきされた黒二子を捨てて中央を黒模様にして打つことは私みたいなアマ低段者でも想起できると思います。私だったらQ13につけるかな。
皆さんだったらどうしますか?
R13というのはある程度打てる方なら最初から考えないんじゃないでしょうか。


60歳を超えた今でも半世紀前と変わらずに誰も真似できない独自の棋風で私たちを魅了し続ける趙治勲の碁にはただただ感嘆するばかりです。

 

趙さんは1956年(昭和31年)生まれで、私より一歳上です。

彼が5歳で日本に来た時に、当然ながら私は4歳です。

そんなに小さな子供が囲碁棋士になるために一人でやってきたというのは「天才少年が来た」といって囲碁界が大歓迎したのですが、ほぼ同世代の私は「なんてかわいそうなんだろう」と思い趙さんの活躍を祈りました。

父親が購読していた「棋道」を読むことで私はすぐに漢字を覚えました。そして、ページ単位で棋譜を「読む」こともできるようになりました。

趙さんの碁は何かのイベントで林海峰名人と打った5子局しか見たことがありませんでした。

でも、私が高校生だったころには連勝記録やタイトル奪取が新聞紙上や棋道で書かれていたので嬉しかったことを覚えています。

 

今私が囲碁を好きなのは趙さんを応援するためだったといっても過言ではありません。

だから囲碁を打たない大学生の頃、仕送りとアルバイトで食いつないでいた、ラーメンいっぱい250円の頃に1500円も出して趙治勲の美麗棋譜集を買って読んだりしていました。

呉先生は小目に対して強い石だから接近しないほうがいいという考えで大桂馬の位置か二間に高く打つことを推奨していました。

私は当時の碁に強く感化されていますので小目に桂馬カカリはちょっと怖いです。

この碁は昭和34年(1959年)に打たれたので私は1歳半くらい。
でも、この碁のことは棋譜で覚えているのでおそらく、父親が購読していた棋道で数年後に読んだのだと思います。

ただ、今Wikipediaで確認したら高川先生は本因坊ですが挑戦者は別の方です。
この当時最高峰の本因坊でしたから一般的な対局かもしれません。

でも、呉清源先生は江戸時代から伝わる棋道の継承者である高川先生に新鮮なチャレンジャーとして挑みます。
呉先生自体が最強の碁打ちであるということはこの当時庶民まで知れ渡っていました。でも、チャレンジャーポジションで碁を打ち、それを迎え撃つ高川先生というのは実に面白い組み合わせですね。

ものすごくレベルの低いたとえですが、私は昨日ネット碁で友達になった三段の方に五局目にして(定先)初めて勝つことができました。
だから、七番勝負をしても勝つことはありうるんですがまあ、普通に考えたらないですよね。
明らかに私(今、野狐初段)は野狐三段に七番勝負で勝ち越すはずはない。
こういう感じが、当時の高川本因坊呉清源先生の間にはありました。

文字を覚えるときに、数字から覚えたので二歳のころは毎日新聞棋譜を読んでいました。

白16!
今ならアマでも打てますが、いまから60年前にこの手を超重要な本因坊戦七番勝負(二日制)で打つのは凄いことでした。

この対局の三年前に、碁打ちの真剣勝負ともいえる十番碁で全ての高段者を打ち込んで格下にした呉清源(もちろん高川先生も十番碁では負けてます)が、のちに本因坊位を九連覇する高川先生との、別の土俵での大勝負です。

私が注目するのは、呉清源先生がものすごく工夫した着手を序盤で打つのに対して高川先生は、文字通り一手も驚くような手を打たずにさらさらと勝ってしまうことです。

こういう碁で、当時は最高峰の本因坊を九期もとってしまう人ってすごいと思いませんか。

九連覇当時の高川先生の碁はアマチュアがお手本にすべきだといわれていました。
今見ると、新鮮かもしれません。

でも、就学前の幼児だった私には全然面白くなくて、新聞に梶原武雄、山部俊郎、呉清源、が掲載されるのを楽しみにしていました。

 

<a href="https://gokifu.net/t2.php?s=2821576952179065" target="_blank"><img src="https://gokifu.net/sgf2misc/png2/2821576952179065-f01.png"><br />棋譜再生</a>

 

<a href="https://gokifu.net/t2.php?s=2821576952179065" target="_blank"><img src="https://gokifu.net/sgf2misc/png2/2821576952179065-f01.png"><br />棋譜再生</a>

サンサンが燦然と輝いていた時代

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昭和40年代後半から50年代前半にかけて、布石の中で星とサンサンが良く打たれていました。それまで主流であった小目が非常に少なくなった時代です。

サンサンはあまりにも隅に固執しすぎていてバランスがよろしくないとみる向きもおおく、サンサン派と星派に分かれていたくらいです。

サンサン派の大巨頭は坂田栄男名人本因坊その他たくさんのタイトル保持者です。一時期は扇子の揮毫にも「燦々」と書いていたくらいでした。

若手では石田芳夫先生。

さらに若手で趙治勲先生。

石田先生と趙さんの間にくるのが中国流で相手の大石を仕留めてしまう「殺し屋加藤」「そして、アマチュア向けの布石と思われていた三連星で大模様を張って買ってしまう武宮宇宙流」

囲碁界が一番輝いていた時期かもしれません。

 

布石としてのサンサンは星に対してすぐにサンサンに入るのがAI伝授の定石化している今、見直されてもいい着手ではないかと思います。